馴れ初め - 3/3

***

「ウォーリア!」
「ガーランド……」
 玄関先で出迎えてくれたウォーリアに、帰宅したガーランドは安堵からの吐息を洩らしていた。もしかしたら帰宅までに姿を眩ませるのではないかと、ガーランドは最悪の事態まで考えていた。
「ウォーリア。Twitterのことだが……」
「ガーランド、中で話そう」
ここは冷える。確かに……。ウォーリアの言うとおりだった。ここ最近、朝晩は急速に冷え込むようになってきた。秋も深まり、冬将軍が到来するのも間近なのだろう。ガーランドはウォーリアの朱く染まった鼻先を見て、ぼんやりと考え込んでいた。
 頬ではなく鼻先を染めているのなら、ウォーリアの躰は冷えているのかもしれない。風邪を引かせるわけにはいかず、ガーランドはウォーリアの申し出どおりにさっと家の中へと入った。

……此処に隠しておくか。
 着替えるとウォーリアに言伝て、ガーランドは一度自室へ引きこもった。鞄を机に置き、没収物を取りだす。どうしてこのようなものを……。後悔でいっぱいの品々は、ガーランドの見るに耐えないシロモノばかりであった。
 ガーランドはその生徒が若気の至りで購入し、見せびらかして自慢するために持ってきたと推測していた。そして、その推測は見事なまでに的中し、生徒は親にこってり叱られていた。
 学校長とともに一部始終を見ていたガーランドとしては、面倒でしかなかった。家庭の教育不足を、自身の講義に持ち込んではほしくなかったからだった。
 没収したシロモノも、ガーランドの私物とあらぬ誤解を受けかねない。さっさと処分したいが、次の不燃物の回収日までまだ日はある。しかし、幸いにもこの家に居るのは、ガーランド以外ではウォーリアしかいない。どうにかウォーリアに見つかることなく、こっそり処分しておきたいところだった。

「ガーランド。先にご飯にするか? 冷えているなら風呂にするか?」
「お前は?」
「私は先に風呂をいただいた……寒くなってきたから」
 部屋を出て、ガーランドはウォーリアに声をかけられた。まるで新婚の気分にさせられるような対話に、ガーランドの頬がだらしなく緩む。風呂に入った身体で玄関先まで出迎えたなら、急激な温度差で鼻先が朱くなるのも納得できる。しかも、ウォーリアの髪はまだ濡れて水滴がポタリと滴っている。満足に乾かすこともせずにいたのだろう。
「ガーランド? なにを……する?」
「髪を乾かせ。風邪を引く」
 食事や風呂どころの問題ではなかった。とにかくウォーリアの髪を乾かしてやりたくて、ガーランドはテーブルの席に座るように促した。手に持ったドライヤーの温風で、ウォーリアの髪を乾かしていく。
「何故、『行くところがない』などと装った?」
 髪を乾かす合間に、ガーランドはそれとなく尋ねていた。昼間のTwitterの件も含まれている。ウォーリアが〝WoL〟であるのなら、ガーランドに隠す必要などなかったはずであった。有名人だからって、ガーランドは特に特別待遇するわけでもない。
〝WoL〟がウォーリアという名の青年であったことに、喜びを感じていたのは間違いない。しかし、それは結果論であって、別人でもガーランドとしては良かった。ガーランドに必要なのは〝ウォーリア〟という名の青年であって、たまたまその青年が〝WoL〟だった……という、現実離れした事実までもがおまけとしてついてきた。
「お前は……困っている者を、その場で放ってはおかない人間だと思った。行く場所のないふりをすれば、お前なら家においてもらえるかと思った」
「……」
 ガーランドは二の句が告げなかった。ウォーリアが完全な確信犯だったことに、衝撃を受けると同時に納得もしていた。
 初めて逢ったあの日、この青年はガーランドの自宅前に立っていた。荷物は持っておらず、着の身着のままで。ガーランドの家に転がり込むつもりでいたことが、まるで決定づけられているかのように。ガーランドはひたいに手をあてた。ここまでされていたことに、ようやく気付いた己自身の愚鈍さにも呆れてしまう。
 はぁ、ひとつ大きく嘆息し、ガーランドはウォーリアの髪に温風をあてていく。髪はドライヤーの風でふわりと舞い上がり、キラキラと煌めいている。ガーランドは一度ドライヤーを止め、ヘアオイルを塗り込んだ。それから話の続きを再開させた。まだ聞かねばならないことは残っている。
「……いつから儂を知っておった?」
「お前の大学へ、以前に呼ばれて行ったことがあった。そのときに時間があったので、とある講義を受けた……」
それが、お前の民俗学だった。ウォーリアは語りだした。言葉のわからない状態で、民俗学という講義を最初は時間潰しのために受けたこと。しかし、心底楽しそうに、生き生きと教壇で語る教授にひと目惚れしたこと。どうにか近づけるように、いろいろと画策を練ったこと……。
「お前は……最初から説明しておれば良いものを」
 ガーランドは顔に手をあて、先とは比べものにならない盛大な嘆息をした。WoL……いや、ウォーリア──この名も本当の名なのか疑わしい──の気持ちはとても嬉しい。しかし、それならば真っ先に教えてくれていれば、このような遠まわりをせずに済んだのではないか。ガーランドは考えてしまう。
 ガーランドが何度も嘆息し考え込むから、ウォーリアはだんだん不安を感じていた。突然自宅前で待ち伏せして『家においてほしい』は、やはり迷惑行為でしかなかったか……と。それでも、ガーランドが誤解をしているのではないかと、それをしっかり正しておきたくて、ウォーリアは肩越しにじっと見つめた。
「私がWoLだと知れば、大概の者は見る目を変えてしまう。お前には……お前にだけは、私を〝WoL〟ではなく〝ウォーリア〟として見てほしかった」
「……」
 ガーランドはなにも言えなかった。この青年の主張が痛いほど理解できるからだった。ガーランドも〝民俗学教授〟などという肩書きに縛られ、雁字搦めになることがある。
 世界的に有名となってしまったのなら、自由を奪われ、あらゆることに制限をかけられてしまうのだろう。まるで絡まった鎖に縛られてしまうかのように。
「……すまない」
「何故謝る必要がある? ならば、もう少し聞かせてもらおうか」
 しゅんと俯いてしまったウォーリアの髪に触れ、完全に乾いていることを確認してからドライヤーのスイッチをoffにする。ヘアオイルを用いたために、艶々とした質を取り戻したウォーリアの氷雪色の髪は、照明の灯りを受けて白銀や薄青などに輝いている。
 見れば見るほど不思議な色合いをした髪色に魅入っていると、ウォーリアがまた肩越しに見つめてきた。
「なにを……?」
「そうだな。Twitterのツイートで、お前は『私は得た』と載せておったな」
 ガーランドはずっと気になっていた。【私は得た。これかは勉学をかね、この言語お使う】という誤字脱字の多いツイートの内容に。いったいなにを得て、どうしてこの国の言語を用いようとしたのか。だが、今までの対話を統括すると、聞かずとも答えは見えていた。
「得たものは、お前にもらったスマートフォンだ……」
「では『がーらんどはやさしかった』とは?」
やはり……。ガーランドは的中していた己の答えに、小さく息をつく。そうなってくると、ツイートの内容に出てきた【がーらんどはやさしかった】はガーランド自身を指していることになる。Twitterに載せるほど、なにか優しいことをしただろうか? ガーランドは首を傾げた。
「初めて逢った見知らぬ私を、お前はなにも詮索することなく、こうしてこの家に留めてくれた。その優しさが……私は嬉しかった」
「そうか……。では、最後にひとつ。『私は動く』とは?」
 ほんのり頬を色づかせて、ウォーリアは小さく笑んでいる。よほど嬉しかったことが、ガーランドにも理解できる。そして、それはガーランドも同様であった。
私は動く。そのためにすべてを捨てる】に隠された意味も、だいたいガーランドは察していた。答えを求めたのは、単に答え合わせをしたかったにすぎない。あとは、ウォーリア本人の口から聞きたかったこともある。
「お前の元へいくために、私は〝WoL〟を捨てるつもりでいた。だから……」
「……っ、」
 ガーランドはさらなる衝撃を受けていた。しかし、不思議と嫌な気分にはならない。むしろ嬉しかった。このような壮年を迎える独り身男をここまで慕い、築き上げたすべてを捨ててたったひとりで国を越え、なにも持たずに乗り込んできた。
「もう、よい。言うでない」
 ウォーリアの心意気を買い、ガーランドは腕を引いてぎゅっと胸の中に閉じ込めた。ガタリとウォーリアの座っていた椅子の倒れる音が室内に響く。ウォーリアを逃がさないようにして、さらに問い詰めていく。
「通信手段を何故、なにひとつ持っておらなかった?」
「……ここに来る前に、すべて解約した」
そのほうが、あてのない無職っぽく見えるかと……。ここまで見事に仕組まれていたことに、ガーランドは唖然とした。
 急にガーランドに腕を引かれ、立ち上がる形になったウォーリアは、逞しい胸の中で小さくくすりと笑った。先は不安を感じていたが、その心配は完全な杞憂だったことが判明した。安堵から、普段崩すことのない表情が柔らかいものへと変化する。
 あまりの美しい笑みに、ガーランドは思わずごくりと息を呑み込んだ。
「お前にこれを持たせてもらえて、私はすごく嬉しかった。これがある限り、私はここに居られる」
 スマートフォンをポケットから取りだし、ウォーリアは眼を細めて微笑んでいた。ガーランドを待ち続けていたときに、不審者として警察に引き渡されてもおかしくはなかった。それなのに、好きなだけ居ててもよいと、部屋と通信手段まで与えてくれた。どれだけウォーリアが幸福を感じ、毎日胸に込みあげてくるものを押さえつけていたか。
「『返せ』と言われても、これは返さない。これは私とお前を繋ぐ唯一の……」
「それがなくとも、此処にずっと居ればよい」
「……」
 言葉途中でガーランドに遮られ、ウォーリアは押し黙った。微妙な微笑をガーランドに向け、逞しい胸に頬を擦り寄せる。抱きしめてきたのはガーランドなのだから、このくらいはしてもいいだろうと、ウォーリアは思ってのことだった。
「…………ありがとう」
 妙な間の空き方が気になるところではある。だが、ウォーリアが頬を擦り寄せてきたので、ガーランドもそれ以上の言及は避けておいた。せっかくのいいムードを、余計なひと言で台無しにしたくはなかった。

「ひと目惚れ……と、お前は言ったな。もし、儂もそうだとしたら──どうする?」
 ウォーリアには聞こえない程度の音量で、ガーランドはそっと囁いた。反応がないところからして、ウォーリアの耳には届いていないようではあった。
 それはそれで、ガーランドは安堵する。年齢を重ねている分だけ、変な躊躇が生まれてしまう。勢いで告白したくても歯止めがかかり、最後の最後で躊躇ってしまった。
「……なにか、言ったか?」
「なにも言わぬ」
 ガーランドの言葉を合図とするかのように、互いに無言となり抱きしめ合う。ほのかに感じる体温をふたりで感じ、心音とともに確かめ合った。
 身長差により、ウォーリアの頭部がガーランドの口許にあたる。先まで乾かしていた氷雪色の美しい髪を至近距離で眺め、ウォーリアにはわからないようにそっと唇をつけていた。
 髪から漂ういい香りが、すっとガーランドの鼻腔を抜けていく。同じものを使用しているはずなのに、己とこの青年では香りが異なることに気付いた。青年のまとう艶やかな色香なのだと察知し、ガーランドの心臓は大きく高鳴り始めた。
……このままでは。そうだ!
 せっかくの甘い雰囲気を壊すことに気は引ける。しかし、今の状態はガーランドにとって良いことはなかった。相手は己を慕っているとはいえ、世界的に有名なリュートの弾き手であることを忘れてはいけない。確か、公式で僅かながらに公表されているパーソナルデータの年齢が正しければ、この青年は……。
「ウォーリア。お前に渡しておきたいものがある」
「私に?」
 この青年が『すべてを捨てる』とTwitterで発表していても、このような展開を誰も想定してはいなかった。成人したばかりの若者にここまでできるとは、誰も考えなかったのだろう。現に、マスコミはもちろん、解析班と呼ばれるインターネット上に公開された情報を解析する匿名の集団などにも、ウォーリアのことは知られていない。
 今のところは安全かもしれない。しかし、今後はどうなるかわからない。一応そのあたりも踏まえて、ウォーリアは着の身着のままでこの国に来たのかと、ガーランドは思い返していた。
 Twitterでは、私服姿のWoLの練習風景や、そのあとの打ち上げなどの写真が載せてられいる。WoLの姿はフードを被った後ろ姿だったり、身体の一部だけを載せていた。身バレ防止をしっかり行っていることが、〝性別不明の美しいリュート奏者〟をさらに魅力的な存在にしているのだろう。
 服装の嗜好からバレるかもしれないと。そのために、当たり障りのない黒の上下に白の腰布姿で、ウォーリアはガーランドの前に現れている。
〝WoL〟が動画配信する際は、大きな黒のフードで顔はおろか、髪まで完全に隠している。そのために、WoLの性別や人種を特定されることは、これまでに一度もなかった。そのせいで、ガーランドもこの青年がWoLであると、Twitterを見るまでは思い至らなかったのであるが。
 しかし、今は見つかっておらずとも、いずれはマスコミが嗅ぎつけてくる可能性は高い。なるべく、そのようなことにならないよう、ガーランドも注意するつもりではある。
「これを……」
「……!」
 ガーランドは懐の紙袋をウォーリアに手渡した。袋を開けたウォーリアは、驚愕に言葉が出せずにいた。
 ウォーリアの手のひらには、なんでもないシンプルな銀の指輪が載せられている。しかも、大きさの違うふたつの指輪が、仲良く寄り添うように重なっていた。
 どうしてこのようなものを手渡されるのか、ウォーリアは解釈に困惑していた。いいように捉えて喜んでしまい、変な恥はかきたくなかった。どうしていいのか反応にも困り、ウォーリアはガーランドを見上げ、見つめるしかできないでいる。
「……ハロウィンが近いからな」
「……」
だから、なんだろうか。ウォーリアはますます返答に窮した。突っ込んでいいのかもわからない。形のいい柳眉を顰めていると、ガーランドの表情が少しだけ変化した。
「今は様々な店がハロウィンと称し、いろんな商品を取り揃えよる。装飾品もまた然り」
これは、お前に似合うと思った。少し照れくさそうな微笑を浮かべるガーランドに、ウォーリアは魅入ってしまっていた。装飾品を多く扱うなかで、ガーランドが選んだものは──。
「……指輪の意味をわかって、お前は私に贈ってくれるのか?」
 間違いだと思いたくなかった。だから、そのために確認をした。ただ単に『似合うから』と言われると思っていたウォーリアは、はくはくと唇を震わせていた。ガーランドの紡ぎだす答えが、とても長く感じられる。こくり、今度はウォーリアが息を呑み込んでいた。
「独り身を貫いておっても、指輪を贈る意味くらいはわきまえておるつもりだが?」
「──っ、ガーラ……っ、」
 大きさの違うお揃いの指輪をぎゅっと握りしめ、ウォーリアは拳を胸にあてていた。すべてを捨て、ここまで来たことに、ようやく実りを得た気分だった。感涙が出そうになるのを必死に堪えていると、頭上からガーランドの優しい声が響いてきた。
「儂は壮年を迎えるような男だが、……お前はそれでも良いのか?」
 ガーランドが年齢差を気にしていることに、ウォーリアも気付いた。顔を上げると、心配げに見下ろしてくるガーランドと目が合う。
「年齢差など、私には関係ない。お前が早くこの世に生を受けただけのこと。仮に私が歳上だったなら、お前ならどうだ?」
「……関係、ないな」
 ウォーリアの気持ちは、ガーランドにも重々伝わってくる。年齢差を気にして躊躇すること自体が不要であることに、ガーランドも心のどこかで安心していた。それならば、ガーランドに残される最後の砦は、ウォーリアがWoLであることになるのだが──。
「私は『すべてを捨てる』とTwitterで宣言をした。それでも、お前は拒むのか? 私は……」
「そうであったな」
 最後の砦をウォーリア本人に崩され、ガーランドは苦笑していた。どこか不満げにじっと柳眉を顰めて見つめてくるウォーリアが、とても愛おしく感じられる。ここまで想ってくれていること、こうして後押ししてくれる意外な積極性を持ち合わせていることに、ガーランドは驚くとともに嬉しく思っていた。
「ウォーリア、指輪を」
「……」
 こくりと頷き、おずおずと指輪を差し出してくるウォーリアを一度強く抱きしめた。単身で乗り込んでくるような積極性を見せるかと思えば、このようないじらしい一面も見せてくれる。ガーランドは顔が緩みそうになるのをどうにか堪え、ウォーリアを腕の中から出してやった。そっと左手を取り、手の中にある指輪の小さいほうを摘んだ。
「ウォーリア。親御さんがおるなら、近々挨拶へ行きたいが。……まずはお前にこれを。受け取ってもらえるか?」
「……っ、」
 言葉に詰まるウォーリアに構うことなく、ガーランドは薬指に指輪を嵌めていく。サイズは申し分なくピッタリだった。これは、生活をともにするようになって、ガーランドはウォーリアの様子を良く見るようになっていたからだった。
 女性より太いとはいえ、一般的な男性より気持ち細い。リュートを奏でるとはいえ、指はそこまで発達していないようだった。もし、小さければペンダントにできるように、ガーランドはチェーンも購入していた。これはこれで、ウォーリアに渡すつもりでいる。状況に応じて使い分ければいい。
「ありがとう、ガーランド」
 嵌められた指輪を眺め、ウォーリアは答えていた。その様子から、否定をされてはいないことを察し、ガーランドは目を細めてウォーリアを見つめていた。
 やはり年齢が気になり、明確な告白にはなっていない。それでも、素直に喜んでくれているウォーリアに、ガーランドもなにも言えずにいた。
「……これも、スマホと同様に返す必要はないのか? ずっと、私が持っていても……いいのか?」
「無論だ。そのためにある」
「……!」
 ぎゅうぎゅうと抱きついてきたウォーリアに、思わずガーランドも抱きしめ返していた。含みのあるウォーリアの言葉は、逐一気になるところではある。だが、それでも互いの気持ちが通じ合ったこともあり、ガーランドは余計な深思を控えた。今は互いの気持ちを優先させたい。
 小さくはにかむような笑みを浮かべるウォーリアの顎を指で支え、口づけを交わす。瞼を閉じて口づけを受けるウォーリアの口内を、ガーランドはゆっくりと探っていく。縮こまる舌と絡め合わせ、優しく蹂躙する。
「んッ」
 深い口づけに慣れていないのか、経験がないのか、ウォーリアの身体はびくりと跳ねる。ガーランドは惜しく感じながらも、唇を離した。互いを繋げる銀糸がぷつりと途切れると同時に、ウォーリアの力が抜けてガーランドに寄りかかってきた。はぁはぁと荒い呼吸を繰り返している。
 あまりの煽情的なウォーリアの姿に、ガーランドの心臓はどくどくとうるさく鼓動を繰り返すのだった──。

▶︎ふたりの初夜へ