2022.6/27
「むっ、」
ガーランドは高鳴る高揚を胸に感じていた。これこそが我々に最適な部屋である、と──。
最近は馴れ合いになってしまっていることが多くなり、本来の関係性が損なわれていたように見受けられる。そのため、一度は初心に戻り、相容れることのない宿敵の青年と今一度向き合うのもよいのではないか。
ガーランドは巨剣を手にすると、隣で考え事でもしているらしい宿敵の青年──ウォーリアオブライトを見下ろした。それだけでウォーリアオブライト──ウォーリアはガーランドの意図を汲んだのか、その揺るぎない強いまなざしでじっと見据えてくる。
「……ほう、良い目をしておるではないか」
「……私とおまえはいずれ決着をつけねばならなかった」
「それが、今だとわかるようだな」
青年も察していたのだと知ると、ガーランドは兜の中でにっと口角を上げていた。いちいち説明をしなくても、己の胸の内に在るものを青年は瞬時に理解してくれる。これまでに培った関係も作用してくるのか、青年は無言で頷いてから剣と盾を構えてきた。
「そうでなくてはな」
舌舐めずりをしたガーランドは巨剣を手に青年へと斬り込んだ。室内はさほど広くはない。戦場とするには分不相応ではあるが、どのような場でも戦えなければ戦士として失格となる。
広範囲に影響を及ぼす戦闘を行うガーランドにとって、不利な地の利ほど闘争心というものは上昇していくものだった。
「っ、」
対してウォーリアもガーランドとさして変わらなかった。ただ、それはウォーリア自身が広範囲に渡って光の剣や盾を飛ばせるからであって、守護となると影響は多く及ばない。
この狭小範囲のなかでの限られた戦闘なら、ウォーリアのほうが有利にはなる。光の盾を前面に大きく出現させたウォーリアは、ガーランドの斬り込みに合わせ、自身も大きく跳躍した。
「はっ、」
キィンと金属の交わる大きな澄んだ音が奏でられた。重厚なガーランドの巨剣を、ウォーリアの持つ光の剣はぎりぎりと押さえ込む。剣を交えた状態で地に脚をつけたウォーリアは、持っていた盾でガーランドに一撃を入れようとした。
しかし、それはガーランドのほうが先読みし、さっと後ろに引くことでふたりには間合いが生じた。互いに武具を構えなおし、互いに見据え合う。
もう、覚えている者も少ないかつてのこと──。この世界とは異なる二柱の神々の支配する不安定な大地の上で出会ったふたりは、どちらかの息の根が止まるまで、こうして幾度となく戦ってきた。そして、此度もまた──。
不条理ともいえるこの小さな〝世界〟のなかで、勝敗を制するのはどちらか……。もしかしたら、想像とは異なる結末をふたりは見いだすかもしれない。
──了