手を繋がないと出られない部屋(DDF)

                2023.02/23 

 誰が仕組んだのかもよくわからない理不尽な部屋に、私とガーランドはふたりして閉じ込められていた。
「……」
 私たちは部屋の壁面に貼られた【手を繋がないと出られない部屋】という張り紙を無言で眺めている。私は文字が読めないからわからないが、ガーランドが黙っているあたり、あまりよくないことが記載されているのだろう。これまでがそうだったのだから。
「ガーランド。これにはなんと……?」
「手を繋ぐだけでよい、と」
「……」
 ガーランドは壁面の張り紙を見遣ったままで、素っ気なく答えてくれた。私は唖然としていた。その程度でいいのか? もっと難しい条件を出されると、私は思ってしまっていたのだが。
 しかし、かつてこれほど無意味な解錠条件があっただろうか。私とガーランドは目を合わせることなく、互いの手をしっかりと握り合う。
「開いたな」
「ああ」
 扉はすぐに開き、私たちは何事もなかったかのように外へ出た。しまった。誰も入ることのできない室内なのだから、もう少しだけでもふたりきりを楽しむべきだったか?

                   ──了