2021.7/04
「──で、何故儂が呼ばれる必要がある」
宿敵の青年に呼び出され、いそいそと向かった先にある部屋に入ってみたものの、その部屋の扉はすぐに閉められて数分が経過した。
その間に儂は青年から件の説明を受けたわけだが……事情を簡潔に聞かされて意味がわからぬが正直なところであった。もう少し詳細に説明できぬのかと言ってやりたいが、語彙に乏しいこの青年に話すのも面倒なのでやめておいた。
それより、儂を〝呼び出した〟この青年のほうが『なにを言っている？』と言いたげな表情で此方を見つめてくる。何故儂が無言で問われねばならぬ？
「決まっているだろう。せっくすとやらは宿敵と交えてこそのものだと私は思っているからだ」
「……」
なにかと勘違いしておらぬか？ 単語の意味もわからずに、ただ闘争と同義語と思い込んでおるのかもしれぬ。あまりに堂々と言われてしまい、思わず天を仰いだのは言うまでもなかろう。はぁ、溜息も出る。が、儂を呼び出したことは褒めてやろうか。これでほかの者を呼んでいたなら、儂はその者を滅していたであろうからな。
「そうだな……では、さっさと出してさっさと出るぞ」
「出す？……なにを言っている？」
〝はじめる〟ではなく〝出す〟と儂が言ったからか、目の前の青年はぴくりと形の良い眉を動かした。言葉から不穏な空気を読み込んだか。だが、もう遅い。
儂はその場で眼を丸くする青年を組み敷いた。せっかくだから……扉が開いても無視して美味しくいただき尽くしてやろう。舌なめずりをする儂に、青年は唇を震わせるだけであった。
──了