2020.10/30
「これは……」
「そうだな」
うっかりこの部屋に入ってしまったガーランドとウォーリアオブライト──ウォーリアは、差しだされた条件にふたりして顎に手をつき、同じ向きに仲良く頭を傾げていた。
悩んだところで埒が明かない。さっさと条件を満たし、このような部屋から出るほうがよい。これもまた、ふたりで同じことを考えていた。
「ガーランド」
「貴様はどのくらい出せるのだ?」
「私は……五個が限界だ」
「ほう? その手は十本あるのにか?」
「……」
ウォーリアはなにも言えなかった。ガーランドの言うことも最もで、しかし、それならガーランドも当てはまる。ウォーリアは口を開いた。
「ならば、お前はどうだ!」
「儂が二十個出してやろう。残りの爪は貴様が出せ」
はぁ、溜息をつき、呆れるようにガーランドは簡単に言いきった。ウォーリアは五個は出せると言ったのだから、やってもらわないと困る。
ガーランドは躊躇いもなく爪に手をかけた。引きちぎるようにずるりと爪を剥がしていく。
「……っ、」
生々しい音にウォーリアは耳を塞ぎたくなった。けれどガーランドがそこまでのことをしてくれているのだから、ウォーリアも覚悟を決めなければならない。じっと自身の爪を見つめる。剥がしても支障のないものを選び、意を決して一気に爪を捲っていった。
ウォーリアも躊躇なく爪を五個剥がしてから、ガーランドを見上げた。ガーランドはすでに爪を剥がし終えている。
「これで……いいのだろうか」
「剥がした爪を差しだせば、文句はないはずだが」
ガーランドの言葉どおり、扉は呆気なく開いた。これにはふたりして顔を見合わせる。
「開いたな」
「全く……どうすれば装飾爪をそこまで粉砕できる? 予備も渡しておいたはずであろう」
「すまない……知らないあいだに壊れていた」
ふん、ガーランドは鼻で嗤った。繊細そうな外見に対して、ウォーリアは意外と大雑把なところがある。ガーランドが施したはずの十個の装飾爪は、ボロボロに剥がれたり壊れたりしている。ウォーリアの言うとおり、無事なのは五個だけであった。
「お前はどうやってその長い爪を保っている?」
「簡単であろう? 壊さぬようにするまでよ」
ガーランドは自身の装飾している爪に、予備まですべて完璧な状態で保っていた。そのための二十個……言われてウォーリアは返す言葉もなかった。
「儂は出る。そこで戯れておるなら好きにせよ」
「まて! 私も出る!」
お前と一緒に……! その言葉を耳に入れ、ガーランドの口角が緩んでいたのは、当人のみが知る。
──了