四月二十二日(FF1)

                2021.4/22

「良い夫婦?」
 目の前にいる青年──ウォーリアに言われ、ガーランドは返答に窮した。この青年がなにを伝えようとしているのか……いわゆる〝いい夫婦の日〟である十一月二十二日と間違えているのか、勘ぐってしまう。
「私にもよくわからない。言われたから伝えた。それだけだ」
「……」
 おおかた街の者にからかわれたのだろう。真面目でまっすぐで無垢な青年は、それだけでからかいの対象になりやすい。ウォーリアがどこで、誰と住んでいるのかを知らない者はいないというのに。
 ガーランドは天を仰いだ。どうやって、この目の前の無垢な青年に教えてやろうか。からかわれたのだと知れば心は傷つくであろうか。消沈して、落ち込んでしまうであろうか。それとも……。
 考えていると、ウォーリアはふむと。なにかを思いついたようにガーランドを見つめてくる。
「いいではないか。私たちは〝良い夫婦〟……なのだろう」
「……」
 屈託のない声で、曇りのないまなざしで、はっきり言われてしまえば、ガーランドも否定はできない。否、してはならない。
 ウォーリアからこのような告白をしてくることは非常に稀で、もちろんガーランドもなかなか伝えることはしない。
「ガーランド?」
「証明、できるか? それを」
 ぐるると肉食獣のような声を喉から発し、ガーランドはウォーリアが逃げないようにその腕で捕まえてやった。腕の中に収められたウォーリアは、ガーランドの言葉の意味を悟り、頬を少し染める。こくんと無言で頷くと二人はそのまま寝所へと向かった。

 からかわれたのだとしても、互いにとって不利益なことはなにもない。これは紛れもない事実であるのだから。
 そのことをウォーリアに教えるつもりで、ついでにその身を愛し尽くそうと。貪ったりはしない。ゆっくり時間をかけて、これほどにないくらい溺れさせてやろうと、ガーランドはウォーリアの中へ身を沈めていく。
 この日一日かけて、良い夫婦を満喫するために──。

​                    ──了