宿敵の垣根(OO)

                2023.02/04

 魔物討伐に呼ばれていて、長い時間場を離れていたガーランドがようやく戻ってきた。
「ガーランド、無事であっ──」
 私が声をかけた途端、ガーランドに腕を引かれて抱き寄せられた。ガーランドの胸の中に囚われた私は、身じろぎひとつできないでいる。
「儂にそのようなことを問うなど、愚問とは思わぬか」
 声に憤怒を含ませ、強気でいるガーランドではあるが、態度と行為が全く矛盾している。それに、抱きしめられているのだから、私の耳に入ってきてしまった。
「お前こそ、儂の居らぬあいだになにもなかったか?」
 私の姿が確認できたからか。突如切羽詰まったかのような声で、私の無事を何度も囁いてくる。そのたびに背にまわされた腕に力が込められ、私は苦痛で眉を少し歪ませた。
 宿敵であるはずのガーランドのこの腕を振り解かねばならないのに、この痛みすら今はもっと感じていたいと思ってしまう。
 私は、いったいどうしてしまったのだろうか。抱いてはならないはずのこの感情をガーランドに問えば、今以上の苦痛と圧迫をもって教えてくれるだろうか。それとも力を緩めてくれるだろうか。
 宿敵という垣根を越えたガーランドのこの行為を、素直に白状してくれるだろうか。問おうとする私の唇は自然と震えてしまっていた──。

 Fin