2023.01/22
未熟な神々が戦士たちの安息の地として創り出した世界は、クリスタルが神を見限ることで崩壊の危機に晒された。
神々の加護が失われた世界は光と闇の均衡が危うく、放っておけばすぐに崩れてしまう。事態を重く見たウォーリアオブライトは躊躇うこともなく、ガーランドに言い放った。
『……今一度、手を貸せ。戦いの場を失うことになるぞ』
──と。
この世界とは異なる創造神エナ・クロにより、神々は世界を繋ぎとめる楔となった。それゆえに保たれた新しい大地に立ち、青年は隣に佇む男とこの世界を眺めていた。
宿敵として幾度となく剣を交え、これまで熾烈な戦いを繰り広げてきたふたりは、神々から世界の状況を知ることのできる力を託された者同士となった。
二柱の神々の意志を引き継いだふたり、そのうちのひとりであるガーランドは、この世界の理も、真実も……すべてを知る存在となる。
ここではない世界で、かつて仕えた神々を守ることができなかったことを、青年は憶えてはいない。だが、消えていった存在として心に宿している青年は、この世界まで失いたくはないと、強い思いを秘めていた。
「今度は、私が──」
まだ未熟ゆえに誤った選択をしてしまった神々なりに、創ろうとした大地を踏みしめ、青年は決意する。
ひとりでは成せないことも、隣に立つ宿敵の男と一緒ならば成し遂げることができる。青年の言葉に躊躇なく続いてくれたガーランドの態度を、今は心強く感じていた。
「ガーランド」
「なにも語るでない」
「……そうだな」
互いの思いは通じ合える。言葉にしなくても理解してくれる宿敵が、ここまで青年の心を察してくれているとは。青年の心の中に、ふたりで手を翳したあの場面が蘇る。
「此処で立ち止まっても仕方あるまい」
「ああ。私もともに」
戦おう──。青年の言葉を最後まで聞かずに、ガーランドは歩き出した。青年もそのあとに続く。ガーランドの背を眺め、それから、その先にいる仲間たちのもとへと行くために──。
Fin