触れる手(FF1)

                2023.1/18

 あの男の触れる手はいつも優しい。以前からこうだっただろうか。いや、きっと違う。私とあの男は血で互いの鎧を染めるような戦いを、幾度となく繰り返してきたはずだった。
 あの男が優しく私に触れるから、私はそのことを忘れていたのかもしれない。
──私たちが、宿敵同士であったということを。